前立腺の病気
2020/12/18
健やかで快適な人生を歩むために
前立腺と加齢は密接な関係があるため、高齢化社会の到来とともに、前立腺の病気でお悩みの方は増加しています。その一方で、「歳のせいだから仕方ない」「泌尿器科はなんとなく恥ずかしい」と、受信を躊躇される方も多いようです。少しでも気になる症状がある場合は、早めに泌尿器科を受診しましょう。
また、50代になったら、たとえ症状がなくても、年に1度は検診を受けることが望まれます。
定期的な検診で、これからの人生を健やかで快適なものにしましょう。
下部尿路・生殖器の構造(男性)
下部尿路
膀胱から前立腺、尿道までをまとめて下部尿路といいます。
生殖器
精巣、精巣上体、精管、精嚢、射精管、前立腺、陰茎、陰嚢を総称して、生殖器といいます。
前立腺の構造
前立腺の働き
前立腺は、精液の一部である前立腺液を分泌しています。
また、筋肉の収縮により排尿を調節しています。
前立腺の病気
前立腺肥大症、前立腺がん、前立腺炎、前立腺結石などがあります。前立腺肥大症は移行領域に、前立腺がんは辺縁領域に発症しやすいといわれています。
膀胱の構造
膀胱の働き
膀胱は、尿を溜めること(蓄尿)と尿を排泄すること(排尿)の2つの働きを担っています。通常、膀胱には300~400mLの尿を溜めることができます。尿が溜まってくると尿意をもよおし、排尿を促します。
膀胱の病気
膀胱炎、膀胱がん、神経因性膀胱、過活動膀胱などがあります。
精巣・精巣上体・精嚢の構造
精巣・精巣上体・精嚢の働き
精巣(睾丸)は、精子を生成し、男性ホルモンを分泌します。精巣上体は、精巣のとなりに位置する器官で、精子の運搬路であり、また未熟な精子を成熟させ蓄えます。精嚢は、精液の大部分を分泌しています。
精巣・精巣上体・精嚢の病気
精巣炎、精巣腫瘍、精巣上体炎、精嚢炎などがあります。
前立腺肥大症とは?
前立腺肥大症は、高齢男性に多く見られる疾患で、膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を招きます。人口の高齢化と共に、患者数は増加しています。原因としては、加齢や男性ホルモンなどが影響していると考えられています。
主な前立腺肥大症の症状
さらに詳しく「夜間頻尿とは?」
夜間睡眠中に1回以上、排尿のために起きてしまうことで、加齢とともにその頻度は増加します。
原因
加齢、前立腺肥大症や過活動膀胱などの下部尿路疾患、高血圧や糖尿病、睡眠障害やうつ病、夜間多尿、飲み物の過剰摂取(特にアルコールやカフェイン)、寒冷などが原因となって夜間頻尿を招くといわれています。
日常生活の留意点
適量の水分補給は必要ですが、夜間トイレに行く回数が多い方は、過剰な水分摂取は控えましょう。また、規則正しい食生活と睡眠、適度な運動、防寒対策を心がけましょう。
前立腺肥大症の検査
前立腺肥大症の治療
1.薬物療法
α1遮断薬
前立腺に多く分布しているa1受容体を遮断して、前立腺や尿道の過剰な収縮を和らげ、排尿を促します。薬物療法の第一選択薬です。 5α還元酵素阻害薬
男性ホルモンの働きを抑え、肥大した前立腺を小さくします。 植物製剤、漢方薬、アミノ酸製剤
炎症やむくみを改善する作用があります。
2.手術療法
TURP(経尿道的前立腺切除術)
標準的な手術法。尿道から内視鏡を入れて、電気メスで肥大化した前立腺を切除します。手術後3~7日くらいで退院できます。
レーザー治療
尿道からレーザーを照射して前立腺を切除します。
開放手術(前立腺摘除術)
前立腺が非常に大きい場合に行われる手術です。下腹部から前立腺を摘出するため、2~3週間程度の入院が必要です。
3.その他
自己導尿、尿道カテーテル、尿道ステントなどがあります。
前立腺がんとは?
前立腺がんの患者数は、50代から増え始めます。進行が遅いがんで、薬物療法の効果も得られやすく、発見が早ければ早いほど治療効果が期待できます。
原因
前立腺がんは、加齢や食生活の欧米化(高カロリー、高脂肪)などが原因で発症するといわれています。
前立腺がんの検査
PSA検査
血液検査でPSA値を調べます。この値がある一定以上の高値を示すと、前立腺がんが疑われます。この検査で80~90%の高い確率で、がんが発見できるといわれています。
直腸検査
肛門から直腸の中に指を入れ、前立腺の大きさや形、硬さなどを調べます。硬くごつごつしたがんに触れることがあります。
経直腸的超音波断層法
超音波の出る装置を肛門から入れ、前立腺の大きさやがんのある場所を調べます。
前立腺生検
前立腺に針を刺し、組織を採って、がんの有無や状態を調べます。
がんの疑いが高い場合に行われます。
その他の検査
MRIやCT、骨シンチグラフィなどで、がんの拡がりや転移の有無などを調べます。
前立腺炎とは?
前立腺炎は30~50代の男性に好発する炎症で、男性の主な感染症の1つです。過労やストレス、飲酒、冷え、長時間の座位などにより誘発されるといわれています。
前立腺炎は症状の程度や経過、炎症の有無などにより分類されます。
カテゴリー | 分類 |
---|---|
T型 | 急性細菌性前立腺炎 |
U型 | 慢性細菌性前立腺炎 |
V型 | 慢性非細菌性前立腺炎/慢性骨盤内疼痛症候群 VA型:炎症性 VB型:非炎症性 |
W型 | 無症候性・炎症性前立腺炎 |
主な前立腺炎の症状・検査・治療
症状
排尿回数が増える、排尿時や射精時の痛み、発熱、寒気、からだが震える、排尿困難、肛門付近の痛みや不快感などがみられます。
検査
直腸指診や前立腺マッサージ後の尿検査などを行います。
治療
細菌などが原因の場合は抗菌薬を投与します。細菌などが原因ではない場合は、他の治療を行います。薬物療法は長期間にわたる場合があります。
※前立腺をマッサージしたあとに前立腺液と尿を採取して、細菌の有無や白血球数などを顕微鏡で調べます。