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尿失禁についてはじめに知っておきたいこと

2020/12/18

排尿に関するからだのしくみ

おしっこは腎臓で作られ、尿道から排出されます

腎臓は背中の後ろにある握りこぶしぐらいの臓器で左右に一つずつあります。ここで大量の血液から水分を濾過して尿ができます。

尿は1分間に1ミリリットルぐらいの割合で尿管を通って膀胱に送られます。

尿管は直径4~7ミリの細い管で膀胱に向かって一方方向に尿を流します。膀胱に入った尿はここでためられ、一定量がたまると神経の働きで脳が刺激され、尿意を感じます。

排尿の準備ができると脳からの命令で膀胱が縮み、今までも漏れないように尿道を締めていた筋肉群がゆるんで、尿道から勢いよくおしっこがでるのです。

このように排尿には多くの臓器や神経がかかわっているので、その中の一つでも障害を受けると排尿障害が発生します。

正常な排尿とは

ちゃんとためて、ちゃんと出せる

正常な排尿とは、尿が膀胱に150ミリリットルぐらいたまると尿意を感じ、250~500ミリリットル以上ためることができて漏れず、出るときは勢いがあって痛みや不快感がない状態です。

また、一日の排尿回数は6~8回、夜眠っているときは0~1回が普通です。

排尿をしようと思うと、まず出口の筋肉が自分で意識しなくても自然にゆるんで広がり、同時に膀胱の筋肉がぎゅっと縮んで、尿を勢いよく体外に送り出します。排尿の後の膀胱はほぼ空になります。

排尿しようとしても、膀胱の縮む力が弱かったり、前立腺肥大などのじゃま物があると尿が出きらず残ることになります。これを残尿とよびます。

残尿が多くなると、あふれ出るようにして尿が漏れることがあります。また、頻回にトイレにいくことになります。

めやすとして、1日10回以上トイレに行く場合は受診する必要があるでしょう。

男性と女性の違い

男性は出しにくく、女性は漏れやすい

男性の尿道は、ほぼ20センチの長さで、周りの組織にしっかり囲まれ固定されています。また膀胱の出口には前立腺があります。このために女性に比べて男性は尿を出しにくい構造になっています。(図1参照)

図1 男性の尿道

一方、女性の尿道は約3センチのまっすぐな管で、出口は内臓を支えている筋肉で囲まれています。この筋肉(骨盤底筋群)は出産や老化でゆるみやすく、男性に比べて女性は漏れやすい構造になっています。(図2参照)

図2 女性の尿道

このようなからだの構造から、尿失禁のなかでも特に出口の抵抗が弱まったためにおきる腹圧性尿失禁は、圧倒的に女性が多く、男性は膀胱の出口にある前立腺が年齢とともに大きくなって、排尿困難をおこしやすいのです。 漏れやすいのも、出にくいのもどちらも困りますね。

高齢者の場合

年をとると、失禁がおきやすくなります

高齢者といっても体力差は60才で±7才の差があるといわれ、平均的な値はありませんが、やはり全体的に衰えてくるのは確かです。

身体の衰えがおしっこと関係する部分は大別すると3つです。

直接排尿にかかわる部分の衰え

腎臓の濾過機能が衰えることで夜間に尿が多く作られる、薬の副作用がおきやすいなどがあげられ、膀胱や尿道の筋肉が衰えるので尿をためづらく、漏れやすくなります。

手足の動きの衰え(運動機能の衰え)

や足に運動まひ、痛み、ふるえ、関節がかたくなる、力が出ないなどにより一連の排尿動作がうまくできにくくなり、排尿の障害となってきます。

認知症など判断等の衰え(精神機能の衰え)

トイレがわからない、用具をうまく使えないなどで障害がでてきます。

失禁のタイプ

腹圧性尿失禁

お腹に力を入れるような動作(物を持ち上げる、くしゃみやせき、走り出すなど)をしたときに漏れてしまう失禁のことです。
普段は尿道を締める筋力が尿を膀胱の中に溜めていますが、お腹に力がかかると締めている力を上回ってしまい尿が漏れてしまいます。
膀胱の位置がずれていたり、出産や手術で尿道を締める筋肉が弱くなり、締める力が弱くなって起こります。

切迫性尿失禁

強い尿意を感じ、がまんできずに漏れてしまう失禁のことです。
正常の人は、排尿を意識的または無意識のうちに抑えることができますが、抑える働きが弱くなったり尿意が強くなりすぎたりすると排尿を抑えきれなくなって尿が漏れてしまいます。
神経の病気や膀胱の異状によって起こります。

その他の尿失禁

常に少しずつ漏れていて知らぬ間に下着が濡れているものや、夜眠っている間に排尿を抑える力が低下して漏れてしまうものもあります。
直接排尿には関係のない理由(トイレがわからない、トイレに行けないなど)でトイレ以外の所で尿が出てしまうのも尿失禁の一種です。

混合型

上記の症状が組み合わさっている場合もあります。尿失禁に関連して困る症状として、たびたびトイレに行きたくなり生活に支障の生じる頻尿や、尿が出にくかったり、いきまないと出なかったり、尿がとぎれたりする排尿困難もあります。